「子どもが高熱で、死ぬかもしれないの。」

青年海外協力隊としてニジェールで活動をしていた時、ある村のお母さんが、子どもを抱えて来てこう言いました。

「子どもが高熱で死ぬかもしれないの。 病院に行くので、200円ちょうだい。日本人は、お金持ちでしょ?」

皆さんならどうしますか?


私はあげませんでした。

次に村に行くと、 その子どもは亡くなっていました。

このことがずっと私の中で引っ掛かっています。 お金を渡しておけば助かったのでしょうか?それは本当の解決方法なのでしょうか?現時点で言えることは、こういった事象は国際協力の現場に山積する課題の一部に過ぎないということです。

一時的なサポートはもちろん重要ですが、これら様々なアフリカ現地の医療課題を解決し、継続して回せる仕組みを作らないといけない、と思うようになりました。

下痢で毎年15万人以上が命を落とす国・タンザニア。「薬」が手に入れば救うことができた命もあるかもしれません。

私たちAfriMedicoが現在活動しているタンザニアでは、下痢症疾患で命を落とす子どもが毎年15万人以上、マラリアで命を落とす子どもが毎年3万人以上います。

アフリカでは医療資源そのものが不足しており、日本の私たちが当たり前のように受けている皆保険制度も存在しません。 インフラの不整備等により病院や薬局までのアクセスが悪く、病院に行くことができても受診までの待ち時間が長い、 診察しても、病院に薬がない、私立などは受診料が高いといった問題があります。 その結果、病気にかかっても容易に医療サービスを受けられず、その間に病気が重症化して、死に至ることも珍しい事ではありません。

私たちはこの課題を解決するために、「富山の置き薬」(配置薬)の仕組みにヒントを得ました。江戸時代から約300年間、日本の健康を守り続けてきた置き薬の仕組みを、現代版・アフリカ版の「置き薬」として、広めていきたいと考えています。

アフリカ版「置き薬」が描く未来とは――。

日本の健康を支えてきた「置き薬」は、古くは掛場帳といわれる帳簿で管理がされており、各家庭や村のデータベースとしての役割も担ってきました。 もちろん、「置き薬ステーション」でも同様の役割が求められます。私たちは、ここで得られたデータを活用し、病気の重症化予防や医療費削減効果などについて様々な検証を実施していきたいと考えています。

その結果として、この置き薬を、「すべての人が、適切な保健・医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる」というUHC(ユニバーサルヘルスカバレッジ)を実現する保健システムの1つに位置付けることを目指しています。

それによって、AfriMedicoは、2030年までの目標を定めた持続可能な開発目標(SDGs)で宣言された「誰一人取り残さない」という原則の実現へ貢献していきます。

これまでAfriMedicoは、「全てのアフリカの人々に健康と笑顔を」というビジョンを掲げ、多くの寄付会員の方々や、協賛企業、そして実際の法人運営に携わるプロボノ会員に支えられて活動をしてきました。今後とも引き続き、皆様が誇りを持ってお力添えをいただけるよう、このビジョンを実現するべく精一杯尽力して参ります。どうか皆様ご支援賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

知ってましたか?置き薬の歴史

置き薬の歴史と現代のアフリカになぜマッチするか、ご紹介します

◆300年◆
江戸時代の元禄3年(1690年)冬、江戸城内で起こったエピソードに由来しています。 突然激しい腹痛に見舞われた大名に、富山藩2代藩主・前田正甫(まさとし)公が携帯していた妙薬「反魂丹(はんごんたん)」を与えたところ、たちまち痛みは治まり、同席していた大名たちはその効き目に驚いて自国での販売を求めたというものです。

◆「先用後利」◆
「用いることを先にし、利益は後から」とした富山売薬業の基本理念。 創業当時、疫病は多発していたものの、貨幣の蓄積が少ない庶民にとって医薬品は家庭に常備することはできず、病気のたびに商業人から買わざるを得ませんでした。こうした背景の中、医薬品を前もって預けて必要な時に使ってもらい、代金は後日支払ってもらう、先用後利のシステムは画期的で時代の要請にも合っていたのです。

◆BIG DATA◆
お得意先が使用する薬などのデータを書き記した顧客台帳「懸場帳(かけばちょう)」。使う薬の種類や量を基に、そのお得意先に適した薬の配置が叶うとともに、使用歴に応じて健康アドバイスも行えるなど、まさにマーケティングの原型がそこにあるのです。

私たちは、配置薬が機能した当時の環境の特徴を富山県まで調べてきました。 結果、未整備のインフラ、大家族、皆保険制度が無かったこと。これらが置き薬の普及した大きな要因だったことがわかりました。これは、今のアフリカの状況にそっくりなのです。

置き薬は、間違いなくアフリカでも受け入れられる。私たちが確信している理由がこの環境にあるのです。

>AfriMedicoをサポートする

理事の紹介

代表理事 町井 恵理(Eri Machii) プロフィール

Chairperson
薬剤師。青年海外協力隊としてアフリカのニジェール共和国で、2年間、感染症対策のボランティア活動に従事。ニジェールでの経験から、どうすればアフリカの医療をさらに改善できるか考え続け、グロービス経営大学院へ進学。「違いがあるからこそ共に学ぶものがある。アフリカと日本の両方を良くしたい」という想いから、AfriMedico設立に至る。

理事 青木 基浩(Motohiro Aoki) プロフィール

Director
同志社大学商学部卒業後、製薬企業に入社。(置き薬のふるさと)富山での勤務を起点とし、感染症領域MRとしての経験を経て、製薬企業向け情報サービス企業において、創薬から上市に至る医薬品ライフサイクル全般における知見を集積した。現在はコンサルティングファームにおいてライフサイエンスセクターを担当している。 AfriMedicoのミッションに強く共感し、自身の医療関連業界における経験や専門性を活かし“Medicine for the last mile”の実現に寄与すべく、2016年5月より理事として参画。海外戦略、企業連携等を担当。

「単なる慈善活動ではないこと。アフリカに日本の伝統的なビジネスモデルを持ち込むことで、セルフメディケーションの拡大に寄与するだけではなく、新たな雇用を産み出し、様々な好循環に貢献することができる。これがアフリメディコに加わった理由です。もちろん、簡単に実現できることだとは思っていませんが、確かな足跡を残すことは十分可能だと考え、そのために力を尽くしたいと思っています。」

理事 山口 牧子(Makiko Yamaguchi) プロフィール

Director
外国語学部フランス語学科卒、精密機器メーカーにて海外戦略・マーケティング担当。学生時代に訪れたモロッコでペン一つで喜んで走り回る子供たちの光景が脳裏に焼きつき、”ビジネスを通じてアフリカに貢献を”という夢を追い求め、また同時に日本をもっと元気にしたい、と思っているさなかにAfriMedicoと出会う。そのMissionに強く共感したこと、また集うメンバーのプロフェッショナルさにもひかれて活動に加わる。 2016年10月より理事に就任。資金調達、広報、人事を担当。

>AfriMedicoをサポートする

現地メンバー:ジェフェリーの紹介

現地でのAfriMedicoメンバージェフェリーを紹介します

Geofrey Yambayamba(ジェフェリー)氏 プロフィール

  • タンザニア薬学会の幹事
    (Executive Secretary at Pharmaceutical Society of Tanzania)
  • タンザニア・聖ジョーンズ大学卒業
    (ST.JOHN'S UNIVERSITY OF TANZANIA)、薬剤師
  • 北・西アフリカを中心にビジネスを展開しているフランス最大の商社、CFAO(セーファーオー)にて薬剤師として勤務する傍ら、タンザニア薬学会で幹事を務めるなど、タンザニア医療の今後を担う若手リーダーの一人。

Q. AfriMedico(アフリメディコ)と出会ったきっかけを教えてください。

2年ほど前でしょうか。私はアメリカに留学して短期間の実地研修を受けていました。そんなある日、以前からの親しい友人である小林大翼さん(*)から電話がかかってきました。そして、提案されたのです。ある日本の女性がアフリカに薬を届けるプロジェクトを始めている。このプロジェクトをタンザニアでサポートしてみないか、と。
(*小林大翼(ダイスケ)さん:一般社団法人日本薬学生連盟元会長。International Pharmaceutical Students' Federation (IPSF)を通じてGeofreyと交流)

Q. すごい突然の話だったのですね。初めて聞かれた時、どのように思ったのですか?

すごい面白い、これが率直な感想でした。そして、私は直ぐに、この置き薬の有用性について理解できました。というのは以前から、医療アクセスの悪い遠隔地について、早急な改善が必要である事を認識していたためです。ただ、インフラ整備を待つしかないのかな、そう思ってたのです。 しかし、この置き薬システムは、その課題を乗り越えられる。医療アクセスが困難な遠隔地に住む人々にも、都会と同等の品質の薬を、同等の利便性で提供することを可能にするはずだ、そう確信したんですよ。

Q. その確信が、AfriMedico への協力に繋がったのですね?

そうです。私は直ぐに行動を始めました。タンザニアの中心都市ダルエスサラームに程近いKisalawe地区にあるブワマ村をプロジェクトのパイロット先として選定しました。その村の村長は私と同年代の友人なのですが、常に村の課題に真剣に向き合っていて必ず協力してくれる、そう思ったからなんです。もちろん彼からは直ぐに良い返事が帰って来ました。しかし私1人ではやれる事が限られます。そこで私はインターンとして病院で勤務している薬学生などを巻き込み、薬剤師である私を中心としたローカルチームを立ち上げたのです。

Q. チーム・ジェフェリーが、そこで結成されたのですね。

はい(笑) このチームのポイントは、大学生が中心になっているという事です。それは若い専門家達にクリエイティブで革新的な機会を提供することがタンザニア全体、そしてアフリカ全体のヘルスケアシステムを向上させる事に繋がると考えたからです。実際私達のチームは、地方自治体や各村の人々と強固な信頼関係を結び、置き薬プロジェクトの立ち上げに貢献した、そう自負しています。

Q. Thank you! 私達もそう思ってます‼︎ 最後に今後の抱負を聞かせてください。

私はこれからも、チーム・ジェフェリーを率い、タンザニアのヘルスケアシステム関連の関係各所が、このプロジェクトを理解できるように尽力し彼らと上手く連携を取っていきたいと考えています。 そして代表理事や日本チームと協働し、AfriMeidcoが目指すミッションを達成させたい、そう強く思っています。

皆様のご支援、ご協力のほど、宜しくお願いします。
>AfriMedicoをサポートする